『言葉ははかない』がうまれるまで 14

☆実際に作業がはじまったのは9月後半。内藤さんはダンボールの山から目を背けて座り込んでましたね。

今回の写真集は20年分でしょ。自分でも覚えてないようなことがある。スーダンの写真集の時は、4年通って写真を撮って、その間雑誌に掲載したり、写真 展をしているので、その時々30枚ずつくらい発表できるレベルに仕上げるんだよ。それが積み重なっていた。最後の1枚が撮れたときに「できた!」という手 応えがあった。スーダンの写真集は、創ろうと思ったときには中身はほぼ完成していたんだよね。

スピッツはね、最初の頃は鮮明に覚えてるけど、12年前とか10年前とかはもうおぼろげになってたね。それをどのように思い出して、どこを切り口にするかが、漠然としすぎでわからない。その前に、俺にとってはダンボールの山だから。

☆いやいや、宝の山です。

撮った本人からしたら、ただのダンボールにしか見えないよね(笑)その箱をボーッと見るしかない。何ごとも熟成期間が必要なんだよ。

☆で、箱を開けられない、と。そのままでは制作がはじめられないので、僭越ながらダンボールの山を崩して、ガムテープをはがしました。

「封を開けますよ、いいですね」とディレクターの春名が言うので「あ、そう? じゃあお願いしようかな、悪いね」とか言いながら、俺は違うことしてたな・・・

☆1箱開けたら、内藤さんはプシュ!とビール開けてました。

やっぱりさ、20年をまとめるには力がいるよ。俺、いい加減だし。

まずは年代順に並べて、撮影リストと照らし合わせて、全部が揃ってるかを確認したんだよね。それで、箱の中にないフィルムのリストを作った。ディレクターが。(笑) 俺はビール飲みながら「がんばれー」って言ってた。

俺さ、途中で数えてみてびっくりしたんだけど、50万カットあるんだよね。どう計算しても・・・ 途中からはデジタルとフィルムと両方撮ってたし。まずやらなきゃならないのは、50万カットを見るって作業なんだよね。気が遠くなるほどの膨大な量だよ。

写真の捜索は事務所代表のグッチャンが中心になってやってくれたんだ。スピッツデータブックを作ったときには、彼が写真選びをしたから。何がどこにあるのかを一番把握してたんだよね。

で、そのグッチャンが言うんだよ。

「内藤さん、いまから20年分はしんどいですよ」って・・・

*内藤順司 SPITZ写真集『言葉ははかない』では使用されていない未公開写真です。

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