『言葉ははかない』がうまれるまで 28

 

『言葉ははかない』そのタイトルが浮かんだとき、これですべてがはまったって思った。この写真集は、もう20年以上も前に種が蒔かれて、それからずっとみんなで育ててきたんだと思う。

スピッツの写真を撮ってこられたことは、やっぱり俺にとっては宝物みたいなもんなんだよね。子どもが生まれて成人するまでの時間を、ヘタしたら家族よりも長い時間一緒に歩いてきたんだし。それこそ、うれしいときも悲しいときも、だよ。俺って結構破天荒な人生を生きてきたからさ、本当にいろんなことがあったんだけどさあ、その度にスピッツの音楽、世界中の音楽に支えられてきたんだよな。

そんな気持ちを言葉にするなんてできないよ、それができるなら作家になってるよなぁ。俺、写真を撮ることしかできないからさ、想ってること感じてることを写真で表現するしかないんだよね。

写真って、闇に閉ざされた場所から生まれるものなんだよ。シャッターを押すことによって闇をひらいて、光が注がれたその瞬間を切り取るものだ。だけどほんとの暗闇だと、シャッターを押してもなにも写らない。そこにどれだけ美しいものがあったとしても見えないんだよ。

チームスピッツが創り出す空間に立って、あいつらが出す音に包まれて、オーディエンスの想いに満たされて、みんなが融けあって生み出される光がなければ、俺は写真を撮ることさえできない。

20年をまとめた写真集が完成したからって、これで終わりじゃない。新しいスピッツを観たい。変化しつづけるスピッツを感じたい。でもやっぱり変わらない、そんなスピッツを撮りたい。俺はフォトグラファーとして、スピッツを今まで通り自然体で撮りつづけたいと思ってる。

311の後、電気の灯らない被災地で、スピッツのライヴが観たいって思った。心の底からそう思った。あかりが再び灯ったとき、生きていることそのものが奇跡だと感じたし、深く感謝をした。その喜びを、身体全部で味わったよ。

この島に生きているすべてのひとが、それぞれに本当に大変なことを経験した。これから先だって、この島がどこに向かうのかなんてわからない。だからこそ、あかりを灯しつづけて欲しい。かっこよくても、かっこわるくてもいいから。その時、その時、感じたままの、ありのままの想いで音を奏でつづけて欲しい。

いつまでも、いつまでも、俺はスピッツのライヴ現場に立って、黙ってシャッターを押しつづけるよ。いや、違うな。スピッツの歌を口ずさみながらさ、シャッターを押しつづけるから。

ほんとうにありがとう。これからもよろしく。

フォトグラファー 内藤順司

 

 

 

インタビュー&構成 春名尚子

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