『言葉ははかない』がうまれるまで 26

「もう春なんだね…長ーいトンネルのなかにいたから気づかんかった?! 初日。」 2012.3.20 Twitter @sudan0312

写真の詰まったダンボールを開けたのが秋の入り口。写真をピックアップしてゆく工程は、やってもやっても果てがなかった。「写真集をGOスカで発売開始 したい」と言うのは、すごく簡単なんだけどさ。3月20日に発売するために、どういうスケジュールになるのかを聞いて、俺たちは「絶対に無理だぁ」と思っ た。

ある程度選んだ写真をコヤマさんに渡せたのが11月。その後も、延々とピックアップ作業は続いて、ポジとネガとデジタルデータの海におぼれかけててさ、とても完成するとは思えなかったんだよ。

「3月出版は無理だろ」と、どこかでは思ってた。12、1月はほとんど不眠不休で、ラフデザインをメンバーに見てもらえるところまでたどりついたのは1月後半だった。そこでやっと、ゴールに間に合うかもしれないなと、はじめて思えたんだ。

ずっと間に合うか間に合わないかの綱渡り状態だったんだけど、なんとなくゴールが見えてきた2月、Twitterの俺の個人アカウントでつぶやいたら、 ものすごい反響をもらったんだ。あっという間にRTで広がっていって、フォロワーも増えて、本当に驚いた。それだけスピッツの写真集への期待度があるんだ と思ったけど、それがそのまま販売数につながるとは思ってなかったね。

3月20日を迎えて、物販に写真集が並んでるのを見たときもまだ実感はなかった。俺のサインを求める人なんて、いるのかなあと思った。メンバーのサインなら価値が上がるだろうけどさ、俺のだと価値が下がっちゃう気がするんだけどな・・・

実はまだ書店に並んでいるのを見たことがなくてさ、ライヴ会場の近くで売ってたよと教えてもらってこっそり見に行ったけど、もう売れてなくなってた。だ けど「あ、ちゃんと売ってんだ」と思った(笑)マネージャーの伊勢さんが、別の書店に並んでるのを見つけて、思わずレジに持って行ったって。ほんと、あり がたいよね。

ツアーが始まったらチームスピッツのみんなが応援してくれた。俺がサインしていると、みんな冷やかしに来てくれてさ、うれしかったよな。物販番長の亜紀 ちゃんにも現場でものすごくお世話になったね。写真集1冊が1.2キロあるんだよ。スピッツの20年はさすがに重いよな。1箱に10冊入ってて12キロ。 それが何十箱と山になってる・・・。もうさ、売れるのは本当にうれしいんだけど、その分だけ亜紀ちゃんが1箱1箱運んでるのかと想像すると、ごめんなさ いって思っちゃう。本当にみんなありがとう。

チーム「言葉ははかない」は絶妙な危ういバランスで成り立ってて、大ゲンカを何度も何度もしたけどさ、絶対にあきらめなかった。表現の妥協を一切せずに、発売日も死守した。このチームだからこそ、この作品を産み出すことができたんだと本当に感謝してるよ。

秋に始まったこのプロジェクトで俺の中では季節が完全に止まっていてさ、気がついたら春になっていた。こんな季節の迎え方もあるんだな。この冬と春のことは、俺きっと忘れないだろうな。

*内藤順司 SPITZ写真集『言葉ははかない』では使用されていない未公開写真です。

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