『言葉ははかない』がうまれるまで 21

☆写真集の制作チーム「言葉ははかない」は内藤さんにとって、どういうチームですか?

チーム「言葉ははかない」は、フォトグラファー内藤順司、デザイナーコヤママサシ、編集者佐々木亮虎、ディレクター春名尚子の4名から成り立っているん だけど、それぞれ俺とは15年以上の歴史があるんだよね。年月をずっと密に過ごしてきたわけじゃないけれど、要所要所で一緒に作品を作ってきた。写真を撮 りつづけてきた中で出逢ったプロの中から選りすぐった、俺にとっての代表戦チームみたいな感じだよね。もちろん、それぞれにすっごい長所とすっごい短所が ある。笑

音楽系の出版社で制作すれば、それはとてもスムーズに事が運んだと思う。だけどさ、新しい空気を入れてみたかったんだよな。音楽出版とはまったく縁のな かった佐々木くんを編集者に、出版社を「主婦の友社」に。“スピッツってこういう感じ”ってとらわれることなく表現してもらいたかったから、音楽感性は一 致するけど、スピッツとは向き合ったことのないコヤマさんをデザイナーに。
作品創りの根底には、まず愛がなくちゃはじまらないでしょ。スピッツに触れて、理解して、愛するところから始まるわけ。説明しても説明しきれるものじゃ ないし、アウェーばかりだと、俺も大変じゃん? それで、スピッツ世界の認識が俺と似通っている春名さんなら、唯一の味方になってくれるだろうと参加して もらった。女性ならではの違う色を入れてくれるだろうとも思ったしね。

俺のイメージは、ザ・ビートルズの「ホワイト・アルバム」だった。それをみんなに伝えると「うんうん」とすぐに伝わったよ。「やっぱりこのチームで良 かった!」って思ったよね。普通はさ、アーティストの写真集だったら絶対に表紙には顔の写真が入っていないとダメとか、帯にはミリオンセラーの曲名を入れ てわかりやすくとか、キャッチーなコピーを付けたほうがいいとかさ、いろいろ暗黙のルールがあるんだよ。

ところがこのチームにかかると「もっとシンプルにしません?」なんて意見が当たり前に出てくる。表紙を創っているときも、モニターを見つめてデザインをいじりながらさ
「イメージは『ホワイト・アルバム』でしょ。もっと潔くしようよ」
「いっそ、著者名外します?」
「いや、さすがにそれはダメだよね?」
「ダメだよね・・・」
「じゃ、もっとちっさく薄い色にして細くしましょうか?」
「あのー、俺の存在感は・・・」
「写真で十分に存在感があるから、表紙や背では目立たなくてもいいですよね」
とか、そんな攻防戦を繰り広げてさ。一番手強かったのは、味方になってくれると思ってた春名さんだったという。あっという間にコヤマさんと意気投合しちゃって、デザイン優先で俺の名前をどんどんちっさく薄くしていったもんな 笑

シンプルで、それでいてショボくならないギリギリのバランスを探して、何十パターンものデザインを0.1ミリ単位で確認しながら、二人がやりとりしているのを横で眺めてると「ああ、いいものが出来上がるぞ」って手応えがあった。

表紙は真っ白。著者表記も英語、文字も限りなく薄い墨。出版社としてはなかなか素直には首を縦に振れない装丁だろうけど、俺の意思を尊重するために、佐々木くんはかなりの防波堤になってくれたんだろうなと感謝してるよ。

*内藤順司 SPITZ写真集『言葉ははかない』では使用されていない未公開写真です。

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