『言葉ははかない』がうまれるまで 20

☆2012年1月末、コヤマさんのデザインオフィスに内藤さんと春名とで伺って、コヤマさんの渾身のデザインを見せていただきました。

テーブルの上に、ドンッと山がそびえていた。

「コヤマさん、これ何ページありますか?」

そこにあるのはものすごい数でさ。思わずそう聞いたら「数えてません」と。彼がデザインしてくれた総数は500ページを超えていた。全体のイメージと、 時代時代の章立てはなんとなく伝えてあった。そして、選抜した写真を渡す時に「この中から選んでください」とお願いをしたんだけど。まさか、それだけのデ ザインが上がってくるとは思わなかった。

「ありがたいけど、でも、すべては使えないよ。ページ数の限界があるよ」とても申し訳ない気持ちになってそう言った。

「わかってます。思うままに写真に取り組んでいたら、こうなりました。足りないよりも、全部出し切って、そこから選び取って欲しいんです」

年末年始もほとんど休みをとることなく写真と向き合ってくれたコヤマさんは、目を輝かせながらそう言ってくれた。デザイン本格始動の11月から本が仕上 がる3月まで、お互いに休みなく作業をしてたなあ。デザインと同時進行で、俺は俺で9月からずっと続けている写真選びの毎日。制作期間中、コヤマさんのオ フィスには20日くらい通ったんじゃないかな。

一枚一枚と向かい合って、そのどれを選び、そのどれを削り取ってゆくか。そこからどんなストーリーを組み立ててゆくか。彼の本気を受け取って、今度は俺たちがそれを形にしてゆく番だった。

選ぶ作業ってさ、「これはいい」の連続でもあるけど、「これはダメ」ということでもあるでしょ。ダメというのは、ものすごく心苦しい。心を込めて創り出してくれたデザインなのが伝わってくるから余計になんだよね。

だけど、ある瞬間に明確な形が見えてきた。大木の中から彫刻が生まれるのと一緒でさ、骨格はすでに内部に存在していて、妥協なく削り落としてゆけば完成形が立ち現れてくる。写真集の完成形はすでにあって、そこに近づけるための作業をしていた感じだった。

すごく寒い日だったね。コヤマさんの愛犬が機嫌良く出迎えてくれた。また、そいつがかわいいやつでさ。俺たちがデザインと真剣勝負している間、ずっと見守ってくれてたんだよな。

 

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